さて、続いて筑波大学基礎医学系、家畜内科(獣医にも外科・内科があるという)獣医師、また自ら小型鰹鮪漁船・洋汀丸を操り「ひきなわ」という伝統的な漁法で鰹・鮪の釣りをする漁師さんという一面をも持つ、升 秀夫先生による講演が、まずその「ひきなわ」という漁法に使う道具の説明から始まった。
(ウミマツという海底のサンゴを削って作った疑似餌および道具の説明は
割愛させていただきます。スミマセン。)

升先生:
「・・・残念ながらこの(ひきなわ)日本の伝統漁業はやがて消えさりつつあるだろうといわれています。その理由は、ひとつは漁業者の高齢化、こう言ったような名人芸の釣り(漁法)をやらない、網で摂った方が早い。さらに、流通の問題で後継者が少なくなってきた。だから伝統漁業が日本からまたひとつ無くなるといわれています。琵琶湖の漁師さんが、ブラックバスが琵琶湖で他のサカナを喰うようになってきて伝統漁業が失われる。すっごく苦しいと言うことを本書かれています。私もその本を3回も4回も何回も読んでみた。 本当に苦しそう。それで、同じように(ひきなわ)やっている他の漁師さんも、もう銚子沖で俺の代で終わりだ、これで終わると思っているんですよ。日本の海のいろんなところでそう言うことが起きている。それで、自分でやっていて、格好よく見えますけれど、実はさほど捕れないんですよー、10回行って、2〜3回捕れたら万々歳。ほとんどは捕れない。サカナが居ない。じゃあその理由から行きましょう。」
と、升先生は本題に入りました。ここからは少し僕の方でまとめさせて頂きます。
升先生がいつも釣りに出るのは、銚子沖の15マイル沖合、距離にすると30キロ付近だそうです。その海域に来ると、性質の違った二つの海流が流れているのがを船上からでもその色の違いではっきり分かるといいます。ひとつは北側から流れてくる緑色の親潮と、南側から流れてくる濃紺の黒潮だということでした。また、それとは別にもうひとつ、利根川からの水流があって、台風の後などにはこの水流が泥汚れの水となって銚子の沖合30キロ〜40キロ付近までに渡って出てくるということでした。これを称して升先生は[カフェオレ]と呼んでいるそうです。
この[カフェオレ]状態の水を含む三種類の水がぶつかる所にはイワシやイカが沸く(大量発生)のだそうです。また、この場所で一日長い時間を過ごす為もあって、ウミガメや海鳥などの様々な海の生物に出逢うことがあるそうです。その度に「なんで海ってこんなににぎやかなんだろう?」と思うことがあると語っておられました。
しかし、年々サカナが少なくなってきているといいます。その理由に升先生は利根川水系からの水流を挙げておられました。利根川水系つまりその中には、霞ヶ浦、北浦水系の流れも含まれる訳なのです。河口付近の漁師さんは皆口を揃えて「霞ヶ浦の毒水を流さないでくれ!」とまで言っているそうです。その利根川水系の水、つまり霞ヶ浦、北浦の水が銚子の沖合のイワシやイカ、またそれを食べる鰹や鮪に影響していることは事実だとおっしゃってました。
さあ、ここで普通の人ならすぐに気が付くはずですよね? つまり、食卓に並ぶサカナにも影響していて、それを食べている僕等にも影響してくると言うことです。まして、関東近郊は利根川水系を利用している訳で、これは大きな問題であるという事になります。また、升先生は次に様々な例を挙げて、森林など木々が豊かな漁場を作るのだ!と述べておられました。そして霞ヶ浦が今の段階で何を綺麗にしなければいけないかについては、化学物質だとおっしゃっておりました。
霞ヶ浦では、むかし蛍が飛んでいて、タナゴも沢山泳いでいたといいます。しかし、今は居なくなったと言うことでした。そのわけに貝類が居なくなったと言うことを挙げてあられました。
蛍は幼虫時期に「カワニナ」という巻き貝を餌にするそうです。また、タナゴは二枚貝に卵を産むため、貝類が居ないと言うとこは彼らにとって致命的だと言うことでした。ある時、升先生が霞ヶ浦の貝を調べたところ、タナゴが卵を産む二枚貝はほとんどみられず、唯一居た貝は「ヒメタニシ」という貝だったそうです。しかし、霞ヶ浦のヒメタニシは、雄の精巣に精子が無くまた、精子を作る細胞も壊れていたという事でした。升先生は、この事実を日本貝類学会へ発表し、討議したところによると「これは病気です。」という返答が帰ってきたそうです。では、どうしてこんな事が起きてしまったんでしょうか?
そこで升先生はヒトの身体について説明を始められました。
升先生:
「僕たちの身体というのは、運動しようとする時すぐに反応します。これらは神経つまり、全て電流による命令です。それともう一つ、私たちが生まれて親になって育っていくとき、成長だとか性に関するところ、これはホルモンの命令によって起きていきます。」
升先生はつづいてOHPの資料に表示された女性ホルモンの構造式から[ベンゼン環]というものを指示し、視床下部、脳下垂体、胸腺、膵臓、腎臓、精巣、卵巣、胎盤というこれらの臓器は全てホルモンによって司られている臓器であるということを付け加えられました。これらの体中で生成される化学物質=ホルモンの事を内分泌と呼び、子供が成長し、恋人が夫婦になり、子供を産み、歳をとるという人間の一生でごく当たり前の事を司る大事な役割をしていて、自分意志とは関係なく、そのホルモンの作用で進んで行くものだとおっしゃっておりました。
また、これらホルモンが作用する濃度というのがあって、環境ホルモンの問題(イボニシという貝が船底塗料の影響でメスの貝にペニスが出来たという)が挙がった時に使われた濃度が1pptという濃度で、100万トンの水に1ccの液体が溶けた濃度であると言うことでした。霞ヶ浦水系の水が15億トンあるとすると、仮にお醤油(例えです)を1.5リットル流し込んだ濃度が1pptで、たったそれだけの量で生物に影響を及ぼすということでした。微量ではありますが、そう考えると本当に恐ろしい問題になってきます。環境ホルモンに関してはまだ研究が進められているところであると言うことですが、ヒメタニシの雄の精巣の異常も、もしかしたらその一端かもしれないと話しておられました。
[ひばり]という茨城県の広報誌にもあるように[霞ヶ浦は水道水源で首都圏の水資源]と書かれているという事から見ると、すでに茨城県民だけの問題ではないと升先生は再び語られました。また、霞ヶ浦の下水処理場と取水所の位置の問題も挙げられました。
霞ヶ浦は上流側に下水処理場、下流側に取水所があり、全国の他の湖にはそのような所は他に無いとおっしゃっておられました。また、実際に土浦の処理場付近のヒメタニシと他の水域のヒメタニシでは、先ほどの病気の発生率が違うということでした。
それから、升先生は「自分の勝手な言い分」というと事を付け加えて、下記の4つ例を挙げられました。
@{下水処理水を霞ヶ浦に流すな!}
出来ることなら、活性汚泥法をやめて電気化学的高速廃水処理にしてくれ!
A{軟質プラスチックワームを使うな!(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)}
これが発端でマンナン・ワーム(コンニャクワーム)の開発になった。
また、化学物質、化学繊維を含む融解ワームの使用と鉛オモリの使用に関しても訴えていた。
B{ガーデニングに除草剤、農薬を使うな!}
生物多様性、環境保護を訴えていながら自分の家のバラや植物に農薬を多用している。
実際に市内のホームセンターでは、成分無記載の輸入農薬が沢山売られいる。
なかには「環境に優しい除草剤」???と書いてある物もあったといいますが、
植物や虫を殺す農薬がそもそも環境に優しい訳がない!と、
おっしゃっておられました。(確かにその通り)
C{プラスチック流入のゴミをかたづけよう!}
升先生は先日2/23に行われたの霞ヶ浦53PickUpにも参加されました。
その際にボートを使い水中より応接用のソファーと、
ガスボンベ3本、パソコンを引き上げたということでした。一体誰が・・・?

また、升先生は霞ヶ浦の湖底および、北浦などからダイオキシンが認められた事を環境庁が発表しているという事実を述べ、そして、釣り人に向けて[ブラックバスがメダカ(弱い小魚の象徴)を食う前に・・・]というお題で話し始められました。 その内容は、芦ノ湖でのバスと鱒類、ワカサギなどの共存が成立しているという事実を投げかけていたり、へらブラと真ブナの駆逐の問題。霞ヶ浦にシーバス(スズキ)がいたと言う事実(元は海たっだのである)、バスはもちろん、ブルーギルがメダカを捕食していること。今ではアメリカナマズが増えて、中国産タナゴが入ってきたこと。また、富栄養対策のホテイアオイ(水草)も植物ではあるが外来種であると言う事実などなど・・・。
だからこそ、釣り人も釣りをするだけではなく、水を育てる時代なんだと言うことを訴えておられました。また、漁業収入が少なくなってきたいま、霞ヶ浦のワカサギ人工ふ化放流も、今の現状の霞ヶ浦の水では、ワカサギが本当に元気に生きていけるのか疑問であるとも話されました。

升先生:
「行政マンは、農漁村を知らない偏差値の高い、都市出身の優等生が多いし、霞ヶ関から海とか湖沼を見ることができないので、皇居のお堀しか見えないらしく、お堀の外来魚駆除が環境を守る仕事らしい・・・だから、川や湖を育てるのは釣り人が担う時代になった・・・。むりだよ、皇居のお堀でさ、環境を守るためのひとつの代表的な作業としてお堀の外来魚の駆除・・・多分国民は笑ってるんじゃないかな? そういうことしている場合かよってね。」
「何でだろう?外来魚リリース禁止条例についての問題点(疑問点)」
※「」内は升先生のコメントをまとめたものです。
●歴史的生物の伝統は何か?
「へらブナが出来るまでにかなり長い歴史があった。」
●エコマニアのエゴロジー
「自然の知識を持って言っているのか、単なるエゴで言っているのかを釣り人が識別すべき。」
●琵琶湖の子アユを全国の河川に放流するのはいったい誰の為か?
「今はこれはアユマニアの為だな。」
●オイカワ(ハエ)は琵琶湖の子アユ放流で広がった?
「時効成立で無罪。」
●キンギョ、テツギョ、タイリクバラタナゴは他の魚を食べないから放流OK?
「そんな考え方ってあるかも知れない。」
●ソウギョ、レンギョ、アメリカナマズ等の養魚業種はOK?
「養魚業種は無罪・・・。」
●へらブナは従来からリリースする釣り文化。
「でもバスだめ?!」
●ブラックバスの移入は雷魚(カムルチー)と大差ないが、
ブラックバスには漢字名がないからダメ?
「漢字名が無いから、戸籍がない??」
●外来魚リリース問題は漁業衰退と環境問題の腹いせではないか?
「ふと、思うときがある、ホントなのかな?でも、琵琶湖の漁師さんは確かに頭に来ている。」
●外来魚リリース禁止条例はあるいみ、琵琶湖とバサー(バス釣り人)のケンカ。
「ケンカは勝つのがあたりまえ!?」
●ニジマス、ブラウントラウトのリリースはOKで、なんでブラックバスはダメなの?
「そうだよね、そう思わない?」
●リリース禁止だけで琵琶湖の伝統漁業は本当にまもれるの?
「ホントにリリース禁止だけで伝統漁業は守れるのか?」
●佃煮を食べない日本人増化。
「今の若い子は食べないよー目玉が気持ち悪いって言うだもん。」
●芦ノ湖の軟質プラスチックワーム使用禁止は科学的根拠がある。
「これは芦ノ湖漁協の主張の通り、間違いない、良いこと無い。」
●人や犬の外来種も平等だが、サカナは殺しても教育上よろしいのか?
「そうでしょ?」
●リリースを禁止したら、新たな移入は起きないか?
「しないだろうと思うけれど、心配だなー。」
●霞ヶ浦での淡水魚のダイオキシン汚染を発表したのは環境庁です。
「そうだよね。国も結構こう言うところ、後押ししているよね。」
●ブラックバス釣りが及ぼす地域経済効果は評価したか、鎖国的意識はないか?
「やっぱり、客観的にこう言うところも考えてみると良いと思うよね。」
最後にW.B.S.にやってもらいたいこととして海側からの視点と言うことで冗談混じりに
「ブラックバス漁業協同組合がやるべき行動」とタイトルを挙げ、再び項目を挙げられました。
「ブラックバス漁業協同組合がやるべき行動」

■ゴミ拾いはボートでも行って欲しい。
■スポンサーの拡大。(組合だから補助金もらうの当たり前!)
■広葉樹林の植林。(森は水を綺麗にする)
■全バス連を作ろう!
■海外の団体とも、協力しよう!
■清談しない。
(現実から隠遁し、礼節の束縛を棄て、琴を奏で酒に耽り、空理を論じて世事を忘却し放逸しない行動。・・つまり、現実から逃げ空想や論議ばかりをしないで、実際に行動しようということ。)
升先生は、一番最後に掲げた「清談しない!」と言うことを強く訴え、壇上を後にされました。
<---感想--->
というわけで、太公望に憧れているという升先生でしたが、お話も人柄も非常に魅力的な方で、とても興味深いお話ばかりでした。この講演の中にはさまざまな角度から見たお話がありましたが、大きく見ると、どれも全てつながっているようにおもいます。それらはその問題の抱えている地域だけの問題ではなく、関わり方の大小はあるとは思いますが、この国に住む、いや、最終的にはこの地球全体の問題へと発展する可能性でもあるように思いました。たかが釣り、されど釣りから始まってここまで意識が広がっていくことはとても良いことだと僕はおもいます。
ブラックバスの問題だけ挙げても沢山出てきているようですが、僕自身もそんな事でブラックバスの釣りをやめる気なんてさらさらありませんし、これら外来魚を害魚という(僕はこの言葉が一番嫌い!だって、いったい何の害??)くくりでまとめてしまうのは、あまりにも無頓着で無神経の様に思うのです。いずれにしろ、吉田さんもおっしゃられたように{外来魚だ!他のサカナを喰う!釣れたら殺せ!}などという発想になることが一番信じられなませんしね。
外来魚と在来魚との共存については、まだいろいろ研究していかなければ見えてこない事もあるでしょう。しかし、僕等釣り人と、そのほかの反対意見者とはいつも水掛議論に終わる傾向が本当に虚しくおもいます。(清談そのもの)どうであれまず生き物なのですからすぐに駆除とかで殺すのではなく、互いに譲歩し合った具体的な方法(行動)を打ちだして行かなければいけないと僕はおもっています。
そして最後に、僕を歌(音楽)で知ってくれた方へのお願いです。もちろん、僕を知っているからといって、僕の考えと同じになる必要は全くありませんし、そう言うことを望んでこれ書いたわけでもありません。あなた自身で思った考えと行動をしていただいて良いと思っています。
今回のレポートでは、僕の文章の技量で伝え切れなかったことがあるかもしれませんし、もしかしたら実際の表現とは違う受け取り方をされてしまった事もあるかもしれません。でも、出来るだけ実際の内容と違わないように忠実に書いたつもりです。(だからこんな量になっちゃた)それがどうしてか?そう、いままでこう言ったことに関心の無かった人にも、せめてこういう問題があるのだと伝えたかったからなのです。レイチェル・カーソンの本にもあるように全ての生き物は海から始まっています。僕等もはもちろん、内陸の淡水の生き物だってそうです。その水が汚染されているということが、一体何を伝えてくれているのかそれぞれの出来る力で見て行かなくてはいけないのだと思っています。
そう考えると、すでに人間が生きているだけで地球にとって害であることは間違いないのですが、それでも生物は生きて行かなくてはいけまません。願わくば、僕等の地球船宇宙号が自らの過ちで軌道を見失い、もう二度と戻れないブラックホールに流されて行かないように、つぎの世代へと引き継いでいけるように・・・。