2003/03/10掲載
霞ヶ浦ミーティング「釣り人との共生は可能か!」単独レポート<前編>
後編はこちら
平成15年3月8日午前11時35分。千代田線北千住駅でJR常磐線に乗り換えた僕は、夕べのアルコールでふやけたままの脳みそを電車に揺られながらその大半を居眠りで過ごし、土浦駅が間近になると「われらをめぐる海(レイチェル・カーソン著)」を拾い読みして過ごしていた。
昨日、吉田幸二さんからのメールでは、なにやらバス嫌いの不審なグループがこの講演会をつぶしに来るのでは無いかという噂の事で、随分心配された様子だった。講演会の受付時間よりも1時間前に到着することが出来た僕は、とにかく会場の様子を見るためにすぐにJR土浦駅の向かい側にあるイトーヨーカドーと同じビル5・6階の生涯学習センターという場所に向かった。
施設のフロアはパブリックスペースになっていて、ボランティアの人たちと紙コップで工作をして楽しんでいる子供達の様子が目に映った。とりあえず、危惧していたような気配は無く、すこしホッとした僕はそれでも興奮気味の頭をクールダウンするために、すぐ近くにあった喫煙コーナーに向かった。
すると、そこには先日の霞ヶ浦53Upでも一緒だった中川進氏の友人で、僕の釣り仲間でもある高須氏の姿もあって、さらに安堵感を増してくれたのだった。 この日、高須氏とは特に誘い合わせたりしたわけでは無く、全くの偶然で同じ目的で同じ場所で出会ったのだ。こういう偶然は本当に嬉しいもので、まさに同志という言葉がふさわしく思えた瞬間だった。
喫煙コーナーの自販機でグレープフルーツ・ジュースを一本買い、それを数回ほどで喉に流し込み、僕はGジャンの胸ポケットから取り出したセーラムに火を付けながら高須氏に会場の様子を聞いてみた。
「会場の様子はどうですか?」
「安心しました。いろんな噂があったので、かなり早めに来ていたんですが、心配していたような事もなく良かったです。」
どうやら、高須氏も別ルートでいろいろ情報を得ていたらしく、そのために早く来てくれていたらしかった。
「そうですか。よかったです。ちょっと会場を見に行きませんか?」
と高須氏を誘い、まだ十分吸える長さのタバコをもみ消して二人で受付の方に向かった。
比較的最近に出来た思われるこの生涯学習センターの施設は、所々にその真新しさを残していた。それでも施設の奥まった場所にある受付までの僕の足どりは重かった。それはすでに抜けていた夕べのお酒のせいではなく、先ほどの安堵感とは別に、どことなく重苦しい雰囲気と緊張感が漂っていること事を感じ取っていたからだった。
受付にはすでに何名かのW.B.S.スタッフが居て会場の準備を始めていた。僕は日頃からお世話になっている顔見知りのスタッフに挨拶をして、まだ時間が早かったが受付用紙に一番で名前を書かせてもらった。
一見こぢんまり見える会場は、講壇後ろにある資料などを投影するOHPが見やすいように、後ろの座席に行くほど高くひな壇になっていて、正確には見なかったがおそらく60名以上は収容できるスペースになっているようだった。僕と高須氏は、一番見やすいと思われる前から3番目の中央の席に座り、用意された資料に目を通した。
時間が経つにつれ会場内は少しずつ人が増えていく。ふと、壇上に目をやると、吉田幸二さんの姿があった。心なしか、僕にはすこし疲れている様に思えた。
開会と司会の挨拶が行われ、社団法人霞ヶ浦市民協会理事長、堀越 昭氏の挨拶があり、つづいて副理事長の岩浪嶺雄氏によるこの講演会の趣旨説明が済むと、W.B.S.の代表として吉田幸二さんの講演が始まった。テーマは「霞ヶ浦に負荷を与えない釣り」吉田さんは釣りをしていない人でも分かるように、出来るだけ釣りの専門の話は避けてどんな風に釣りを介して霞ヶ浦と関わっているかを まずW.B.S.で行っている霞ヶ浦湖岸の清掃についてから語り始めた。
※(出来るだけ内容を忠実にお伝え出来るようにしておりますが、文章化の理由で若干言い回しを変えている部分があることをご了承下さい。)
吉田氏:「ただ、単に綺麗な釣り場で魚釣りがしたくてゴミ拾いを始めたんです。始めたのは7年前で、今年で14回目を迎えました。始めた頃は40〜50名とごくわずかな人しか集まらなかったんですが、今回は320名ほどの心ある釣り人に集まっていただきました。汚い釣り場で釣りをするというのは、やはり心が荒んでしましますしね。ここは湖岸130キロメートルですから、霞ヶ浦周辺住民は100万人居るので、それこそ一人1メートル四方のゴミを拾えれば、ものすごい勢いでゴミが無くなるとおもうんです。
これは升先生(筑波大学基礎医学系)から聞いた話でけれど、プラスチックゴミなどの石油化学物質が波浪によって砕かれて水中に溶けると怖い物質がどんどん水の中に入ってしまうと聞いてから、僕等のやっているゴミ拾いは間違いでは無かったんだなと思いました。できれば将来、100万人が手を繋いでゴミ拾いが出来ればと、ちょっと夢のような話ですけれど、そう思って続けて来たわけです。」
次に、吉田さんはワーム(※1)の釣りに関してこう述べられました。
(※1)ワーム[プラスチック・ワーム]
ミミズや小魚を模した疑似餌で直接針に刺して使用する。素材はソフトプラスチックで出来ており、その柔らかさを出すための可塑剤の成分(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)が環境ホルモンとして問題になっている。
吉田氏:「僕自身、ワームの釣りがあまり水の中に負荷を与える釣りと思っていませんでした。本当に今までは疎かった言うのがあります。こういうプラスチックの物など社会生活をしていればいくらでもあるわけで、それがどうしていけないの?と思っていました。」
吉田さんはこう述べた後、釣りに使うべき道具で今までのワームに変わる素材として升先生のアイデアを元にコンニャクを提案し、マンナンライフ社の協力の経てその試作品を持ち込んで来場者に提示され、また、実際にご自身で食べてみせてくれました。(製品化はまだされていません)

コンニャクワームの画像
(ちなみに僕はタイミング悪く食べることが出来ませんでしたが高須氏が食べたところによると味は甘く出来ており、コンニャクおやつそのもの、ということでした。)
また、次にワームの釣りに使うオモリの鉛も水に良い影響を与えないということで、水への影響が少ないというタングステン(※2)と言う素材の使用と、根ガカリ(水中の岩や枝などに引っかかる事)などでのルアー回収率を上げるために太いライン(釣り糸)の使用をあげてられておりました。
(※2)タングステン[スエーデン語で(重い石)の意]
金や銀と同じように純金属で、比重が鉛の1.7倍あり、硬度がダイヤモンドに次いで硬く、その耐熱性の高さから身近な物では白熱球のフィラメントに使用されている。(タングステン素材のオモリは鉛よりコストが高くなりますが、数年まえより製品化が進んでおり、ルアー関連の商品ではだいぶ使われ始めているようです。)
吉田氏:「そろそろ釣りをする人々も考えましょう!と言うことで今回このような壇上に立っている訳ですけれど。様々な規制や制約に縛られるだけではなく、逆に釣り人から[こうしてはどうだろうか?][ああしたらどうだろうか?]と発信できるように皆さんに知識を蓄えてもらいたいと思います。また、市民協会にはいろいろなプロジェクトがありますが、共有できる所はどんどん共有していってもらいたいですし、いろいろなイベントがありますので、協力出来る部分にも協力していただきたいとおもってます。それと、ご存じの方も多いと思いますが、僕等のバス・フィッシングというのはサカナの気持ちになって釣りをしないと釣れないんです。それはどうしてかっていうと、今騒がれている肉食魚だからです。他の小魚の事がよく分かって、生態の知識がなければ、バスは見つからないんです。ところが、今の霞ヶ浦はバスが全然見つからないんです。キャットフィッシュ(アメリカナマズ)ばかり・・・何年か前はバスばかりでしたが、道路を見るとキャットフィッシュが投げ捨てられています。そう言う釣りの人ばかりにならないように・・・[増えた!悪いサカナだ!殺せ!]・・・おかしいですよね? 水が良くなって、本当に魚たちが棲める状況になったときに[これは多いからちょっと居なくしましょう。]という事であれば、僕等も協力できる部分もあるんですけれど、[逃がしてはいかん!喰わなきゃいかん!]というのは釣り人の自由を束縛されているようにおもいました。(中略)・・・釣り人をいじめるのは簡単です。[おまえ等、遊びでやってんだろ!] でも、遊びがあるから人生を、仕事を一生懸命できたりするわけです。もちろん、僕の仲間でも今は一緒に釣りはしていないですが、[ブラックバスは居ちゃいけないサカナだ!]という人もいます。そう言う考えが出てきても当たり前だとおもいます。ですから、いろんな考えを排除することなく受け入れて、さてさてガラガラポン!だとおもうんですよね。その中で、僕等が霞ヶ浦に対してどんな事をやっていこうかということなんです。自分が今何をするか、何が出来るのかだと思うんです。よりよい姿で霞ヶ浦を残して行きたいという気持ちは十分あります。ぜひ、皆さんと一緒に霞ヶ浦を守り、釣りを楽しんでいければと思っています。」

バス・フィッシングと出逢わなければ霞ヶ浦に移り住むことも無かったという吉田幸二さんは、霞ヶ浦に移り住んで10年なるといいます。自分の一生を左右するほど釣りにのめりこんで、釣りがあったおかげで子供が無事に成長し、家族とも上手くやってこれたとおっしゃってました。バス・フィッシングを初めて31年、現在51歳になる吉田幸二さん。ここでバス・フィッシングを「外来魚だからダメだ!」と言われてしまうと自分の人生を全否定してしまうことになってしまうと語る姿に、僕も共感を持ったのは言うまでもありません。
もちろん吉田さんほどではありませんが、同じように僕自身もバス・フィッシングと出会って自然への感心や様々なものの考え方が構築されました。また、こうして釣りを通じて水辺、つまり自然と触れ合う事で心の中立が取れ、ぎすぎすした都会の生活も過ごせてきたわけです。それと、直接は関係無いですが、僕が音楽への本格的な興味を持ったのは中学生時代の釣行時に聞いた深夜ラジオから流れる音楽達でした。
自然に悪影響を及ぼす様々な問題は、身近なところにも本当に沢山あると思います。それらをいきなり全て解決することなどはまず出来ないでしょう。しかし、少しずつでも、改善することは出来るはずです。無駄だと嘆いたり、行動せずに議論ばかり求めたり、それでは何も変わりません。あなたの愛しい人や大切な人を守るように、無理なく出来る事でいいですからその手で出来ることを見つけましょう。これはもう釣り人や、一部の環境問題に携わっている人だけの問題だけではないはずです。
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